鈍色の庭



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 ひとしきり泣いた
 二度寝をした
 嫌な夢だった
 夢の中では何とも無かったのに
 寝覚めは最悪だった


吉夢





 そう、あまりにも寝覚めが悪くて不貞寝をした。次に目が覚めたら10時を回っていた。
(1コマ目……サボっちゃったよ…)
 ベッドの上で呆然と時計を見た。1番はじめに目が覚めたときにつけたはずのテレビが消されていた。
(そいや…9時ごろ消したっけ)
 毎朝テレビのカウントダウン占いを見るのが楽しみだったのに、ここ3日ぐらい見ていない。
 ぼんやりと頭上にあるケータイに手を伸ばす。新着メールが来ていた。
(いつきたんだろ……気付かなかったや…)
 それでメールを見ようとしたとき、酷く深いな音が聞こえてきた。マンションのオートロックの入り口の呼び鈴のだ。
(誰だよこんな時間に…学生なんて居ないに決まってるだろ…)
 払ってない国営放送の手先かと思って出ないでいると、何度もせわしなく鳴ったので違うのかと思い、のそのそとインターフォン(モノクロ画像つき)を見に行ったら、慌てて出て行く後姿が見えただけだった。
(何だ…?)
 肩透かしを食らった気分で、私はベッドに戻った。今、10時25分。昼一番の授業には出なければ。今日はその二つしか授業が無いのだから。
(それにしても後味の悪い夢だった…)
 思い出してまた少し、泣きそうになった。
(そうだ、メール着てたんだっけ)
 思い出してぐったりしつつ再びケータイにへを伸ばしたところで、今度は部屋の呼び鈴が鳴った、
(有り得ない…不法侵入だよ…)
 オートロックは付いているが、一階の壁を越えればやすやすと進入できる。
 けたたましく連続で4回ほど呼び鈴が鳴らされたあと、扉が叩かれた。ドンドンドンドン!!と、それから何か叫ぶ声も。
(あれ、この声まさか…)
 暑かったから夜中に脱ぎ散らかした寝巻きを慌てて着て、玄関へ走った。
「侑士!」
 扉の向こうには、丸渕伊達眼鏡の色男が立っていた。侑士だ。
「なんや…無事かいな」
 私の顔を見るなり安堵の息を吐き出し、そう言った。
「無事なら無事で、メールぐらい送り返してぇな」
 ほんま心配したんやで…、と私に倒れ掛かる様に抱きついてきた。
「ごめん、侑士…」
 とりあえず中に入ってもらった。お茶を出して上がった息を整えた侑士がもう一度、息を吐いた。
「どうしてん? 自分1コマ目サボるん滅多にないやんか。連絡もせんし」
 侑士は私と音信不通なのを酷く心配して、授業が終わり次第慌てて来たらしい。
「うん…ちょっと悪い夢を見てね……」
 えへへ、と取り敢えず誤魔化しておく。
「悪い夢? なんやったん? ゆーてみぃ」
「え、うん、あのね…母さんが腕の中で死んでたの」
 俯いた母親の顔が思い出される。ヤだな…。
「なんや、それは悪い夢やないよ」
「へ?」
「人が死ぬ夢は吉夢ゆーてな、死んだ人にえぇことがおきるんや」
 なんかいい笑顔でそう言われた。
「お母はん生き返ったとちゃうやろ? 生き返ったら逆に悪いことが起きるんやけど…」
「大丈夫! 生き返ってないよ!!」
 なんだ、いい夢なんだ!
「おぉ、生き返ってへんのやったらばっちりや。えかったなぁ」
 ゆっくり頭を撫でられた。不安だった気持ちは、頭の上の侑士の手から全部遠くへ行ってしまう感じだった。
「えへへ…侑士、ありがとう」
「ん? もう大丈夫か?」
「うん…侑士のおかげでね」
「ほんま心配したんやで~! いっつも来とんのに来ぃへんし、メールもないし、電話しても出ぇへんし!
 心配すぎて来てしもうたやんか」
 ぎゅって、強く抱きしめられた。侑士の体はとても暖かかった。暖かい。

 体をちょっと離して、キスをした。安心って、こんな形だと思う。

END


というわけで忍足侑士でした。
なんが言いたいんかよくわからん文ですが(それはどれも同じだ)悪夢を見たときに慰めてもらうなら忍足君がいいなぁと思いました。
おわり。


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